感謝をつたえる

私のはなし

こんにちは。カウンセリングサービスの青井あずさです。

今日は感謝を伝えるという癒しのツールについて、私の体験をもとにお話ししたいと思います。

私は以前クライアントとしてカウンセリングサービスのあるカウンセラーに世話になっていました。

私がカウンセラーに相談したのはパートナーシップが上手くいかないということだったはずなのに、そのカウンセラーはいつのまにか私の母親についての話をしていたのでした。

母親?なんで?パートナーシップなのに?

パートナーシップに反映されるパートナーとの距離感は、自分の母親との距離感と密接な関わりがあることを、当時の私は知らなかったのです。

でも私にとって母親問題は、パートナーシップ・セックスレス問題よりはまだマシな、嫌だけれども、まぁ話せなくはない話題でした。

だって母親問題です。「毒になる親」という本が1999年に出版されて以来、親との関係が子供に及ぼす影響について関心が集まり始め、世間では「毒親」という言葉が使われ始めます。
2012年に田房英子さんの『母がしんどい』が発売されて以来、特に母親との娘の関係がクローズアップされてきたのですが、その頃から「毒親」という言葉を自分のキーワードだと思い、ずっと追いかけてきたのです。

自分の母親を「毒親」認定してからは、何か問題があるとその原因を「毒親」である母に探しては、「自分の人生のがこうなった責任は親にある」と心の中のデスノートに書き綴ってきたわけです。

私が悪くないということ、母親が悪いということならいくらでも言えましたから。

カウンセラーと取り組む母親問題は私の文句から始まりました。

文句が後から後から出てきます。キリがない。

このように私の心の中は「怒り」に満ち溢れた状態でした。

心が怒りに満ちていると、そのように世界を見てしまいます。

すると自分にとっての世界は怒りでいっぱいになります。

怒りもった怖い人でいっぱいになります。

このように自分の心のありようを、自分が見ている世界に映しだすことを心理学では投影といいます。

怒りというのは「腹が立つ」というレベルから、大きいものになると「誰かを許せない」という感覚を持つ場合が多いです。

そして他人への怒りは結局のところ自己攻撃なのです。

自己攻撃や自己嫌悪が大きい人ほど、その方が外に向けている怒りが大きい。

怒りは自分が持つ「自分が悪い・よくないもの」という思い(罪悪感といいます)を、抱えることができないほど大きくなるとそれを外に投げて人に映してみるのです。自分の罪悪感が投影されて人への怒りとなるのです。

外に向けた怒りが大きい人ほど、実は心の中で自分への攻撃も同時に起こっています。

母への文句が出る分だけ、自分のこともディスっているのなら、世界中からディスられるという投影を持つのですね。そんな私の感じ方は生き辛いものでした。

そんな自己攻撃マシンで自己嫌悪の塊だった私が、母を許していくこと。

母親・自己嫌悪問題に取り組んでいた私は、あるときカウンセラーからこんな宿題を出されたのです。

「年末実家に帰ったら、お母さんに『産んでくれてありがとう』と伝えること」

これが強烈な宿題であるのがわかるでしょうか。

言われた私は思わず絶句してしまいました。

絶対にやりたくない!それだけはやりたくない!

なぜ私の方が母に譲歩しなくてはいけないのか。先に母が謝るべきではないのか。帰省をやめてしまおうか‥

そんな気持ちでずっと帰省までを過ごしていました。

ここで私が葛藤していた本当の気持ちは、こんなダメな自分がそんな良い言葉を言ってもいいのかということでした。

こんなにダメな自分が、良い言葉を母に伝えるなんて!偽善にもほどがある…と。

そもそもありがとうと感謝を伝えることは、自分の存在が良いものであるということ、自分の存在が祝福されていると自分で認めること。

そんなことを、こんな私が言えるはずがないと葛藤していました。

そんなにいいものであるはずがないのに。

自己嫌悪の強い私が自己嫌悪を乗り越えて相手に感謝するなんて。

でも、この嫌な気持ちをずっと感じているのも苦しい。

今自分が停滞している原因の一つが母親との葛藤ならば、それを超えていきたい。

乗り気ではないけれども、ちょっとチャレンジしてみようという気持ちになったのです。

実家に着いて少し落ち着いたときに、母に伝えました。

「あの、あの、私を、私を産んでくれてありがとう…」

きっと今までのように受け止めてもらえないし、こんなことを言って馬鹿にされるだろうと思っていました。

だからものすごく緊張したし、嫌な気持ちだし、みずくさいし、恥ずかしかった。

けれどもその言葉を聞いて、母は泣き崩れてこう言いました。

「私でよかったの…?」

その言葉を聞いて私はそれまでの母を理解しました。

母も自己嫌悪が強くて自分自身を嫌っていたし、だから自分に自信なんてなかったのだ、正解をさがして迷いながら私を育てた一人の女性だったのだと。母にも沢山の罪悪感があったのでしょう。 

感謝とは実は許しの成分も含んでいるのです。感謝をすると怒りの感情が和らいでいくのです。

母に感謝を伝えたら、母を理解し許すことになってしまい、結果自分がひょっとしたら良いものかもしれないと光であると分かってしまった。

あぁ、なんという心の急展開なのでしょうか。

お母さんとの距離というのは、自分の人間関係の礎えになっていることが多いのです。生まれたばかりの自分にとって世界の全てだったお母さんとの関係。だから、パートナーシップを含む対人関係に影響を及ぼすのですね。母親との関係が改善されれば、その感覚は自分の世界へ投影されます。これはいくらでも上書きできるのです。感謝や赦しといった手段によって。

このことがすべてではないけれども、その後私の進路は急展開をします。
夫婦関係を温めなおし、自分がやりたかったこと、カウンセラースクールに入学することになるのです。
夫婦の間にまたロマンスが戻ってくるなんて思いもしませんでした。
まさか40歳をすぎてもやりたいことに戻ってこれるなんて思ってもみませんでした。
これらは本当にうれしいことでした。

自分の人生が前に進んでいったという感覚があるのです。

感謝を伝えるというのは、強力な癒しのツールです。

ありがとうをえることでそれまでの見方ががらっとかわるようなことが起こりうるのです。

青井あずさ

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